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2020年08月

水臭い

2020年08月04日
最近は普段はあまり家にいないようなお父さんが家にいることが多く、奥さんが鬱陶しいといって「亭主元気で留守が良い」を煽っていますが、テレビで放送されるとすべての家庭でそういった感じになると勘違いしそうです。

当家では普段から店主は家にいることが多いので、夫婦水いらずの時間が増えるのかと思いましたが子どもたちもいるので夫婦ではなく家族水入らずのじょうたいです。
梅雨も開け熱中症が増える時期になり沢山水を飲んだり塩分を取るようにしないといけないそうですが、水を取りすぎるとお腹を壊したり塩分を取ると言ってもとりすぎで血圧が上がるとマイナスな報道しかしないテレビを見ているとなんだかなぁという感じでしたが、そんな水に関する言葉で水入らずという意味を説明していました。

水入らず、仲がよい様子を伝える意味として「夫婦水入らず」のような使い方がされる。

元々花街の言葉で、お座敷では芸者さんが客にお酒を注いでもらえるが、その時「まぁ一杯」といって芸者さんにお酒を振る舞う光景がよく見られる。そのときには同じ盃を使うが。
客が飲んだ盃を杯洗(はいあらい)という丼サイズの茶碗に水が張ってありそこで口を付けたところを洗って芸者さんが返杯を受けるというシステムになっている。
キレイな所作になり衛生的にも優れた方法でお互いに気持ちよくお酒が飲める。

一見さんお断りの京都でもこういうふうにお客と店側で分けれれたルールが出来上がっている、そんな中でも長い間店に通い芸者さんとも馴染みになり気心が知れるような中になると、杯洗で飲み口を洗うようなことはせず直接客が飲んだ盃を使ってお酒を飲むようになる。
あなたのことは良く存じていて信用できる方なので、水で洗うような無粋なことはしませんよ!と杯を洗わない、これが「水入らず」の語源になったそう。

今では花街でも営業自粛で開店休業状態が続いているようでせっかくの杯洗に使っていた水が使われなくなって腐ってしまい「水臭くなった」そうです。

お後がよろしいようで(笑)
| 茶道具 |

侘び寂び

2020年08月02日
茶道の世界では千利休がこの侘び寂びを芸術にまで仕上げたのですが、侘び寂びと言うと枯れたような雰囲気であったり
華美なものを排除したようなもののように漠然と思っている人も多いと思います。

これらは間違いでは良いのですが正解でもないと言えます。

利休は元々雑器として使われていた茶碗にも「美」を見出しました。
戦国時代の殿様は戦に勝った際、領地を褒美として与えていたのですが、その領地も狭い日本では限りがあります。そこで考え出されたのが茶道を武士の中で流行らせ、そこで使う茶道具に勝ちをつけたのです。
その価値も唐の国で作られたものを日本で作られたものより価値が高いと言うふうにしていきました。
殿様から褒美を拝領する時「領地か茶道具どっちにする?」って聞かれたそうです、領地は米が採れてご飯が食べれれますが茶道具はただの茶碗です。
それが同レベルで扱われていたのですから凄い価値だったのでしょう。
只の茶碗を領地と同じレベルにまで上げたのが千利休でした。

唐の国で庶民が日用に使っていた雑器が日本に渡り領地と同じレベルになったのですから凄い出世です。

その出世の元になったのが、侘び寂びでした。

侘び寂びは一つの言葉はなく、侘と寂びでは別のもので2つ合わさって一つの世界観を醸し出しています。
余白のほうが描かれているものより大きな掛軸であったり、簡素なに描かれたような絵であったり、割れてヒビが入った茶碗など不完全なものを表していて、他の物に無い固有の姿にかえって面白さが感じられる。それが「わび」。

囲炉裏で長年いぶされ続けてきた燻竹、作られたときから長い年月使い込まれ色合いが変わってしまった燻し銀の道具など時を経て色味や肌合いが変質した道具たちには無情なものを感じます。

しかし作られた時のピカピカの状態とは一味違う落ち着いた雰囲気が味わい深いものを感じます。ヒビが入ったままで美しいものもありますが、それを金などで修復したところを景色と呼んで新し「美」を作り出すこともしたりします。
かと言ってヒビが入っているから良いというわけでもないのですが、ヒビが入ったものを修復して新しい景色が出来ることでより愛おしくなるものも有ったりもします。それが侘び寂びの精神に繋がるのかもしれません。

そういった古いものを壊れたら修理して使うという事が出来る日本人の感性が有るからこそ、侘び寂びという感覚があるのだと思います。

こういう感覚は日本人にしかわからない感覚で欧米人にはさっぱり理解出来ない感覚でしょう。かと言って同じアジア人だからといって中国やその隣国の人にも絶対に理解することのできない感覚です。

最近では感覚も欧米化しているので形の揃った物、ヒビなど壊れたところがなものが美しいという感覚になってきているので、
侘び寂びのようなヒビが入って形の崩れたものや余白の空間に「美」を見出して鑑賞するという感覚が薄れてきているように思います。




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プロフィール
管理者:代表取締役鑑定士:杉本昭博

趣味:読書
特技:占術
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